同じ過ちを繰り返したくない…
だけど…人は失わなければ
気づくことはできない……
でも、もし…もしも……気づくことができたのなら…
過ちを繰り返すことはなかったのだろうか…
失うことはなかったのだろうか…?
---『思い』---
玄関だというのにそこは異様な広さがあった。
少年は辺りを見回していた。
エドは目でものを見ることはできない。
だが、聞くことによって情報を入手しているのだ。
どうやら、視覚の代わりに聴覚が役目を果たしているようだ。
エドは相変わらず部屋を見回していた。
「ほら、さっきから間抜け面してないで、早く入ってきなさい。」
「誰が間抜け面だって!」
相変わらずというか、悪口に対してはものすごく反応が早い。
「いいから、入ってきなさい。」
エドは渋々言われたとおりに中に入っていった。
《それにしても、バカでかい…こんなに大きな家なににつかってんだ………》
ぶつぶつ言いながら、エドは玄関をあがった……
そのとき一瞬頭がクラッときた。
「………」
反動でエドはバランスを崩しそうになった。
とっさにエドはドアの手すりにつかまった。
《な……なんか……いま…》
「足下に気を付けたまえ。」
ロイはソファーで新聞を見ていながらも、エドの方を気にしていた。
エドは体制を立て直して部屋に入ってきた。
だがエドは部屋に入ってもドアの前で突っ立っていた。
「どうしたのかね?」
「でも本当にいいのかよ?」
「なにがだね?」
エドは少しうつむき加減で…
「……本当に…俺がこの家に…」
エドの言いたいことを感じ取り。
そしてエドに手招きをして自分の横に座らせた。
「かまわない、最も仕事であまり家に帰れないのでね。 この家も寝に帰ってるだけみたいなものだから。」
「使われないよりも、誰かに使ってもらった方がよいと思ってな。」
「で………でもさぁ……何で…」
エドはまた、頭がクラッとし今度は頭痛も走った。
《………っ……なんだ…さっきから》
「この家がいやなら、別に強制はしない。」
「それに君に行く当てはあるのかい?」
エドはもっと黙ってしまった。
確かにエドは帰る場所も迎えてくれる家族もいない。
一人で、暮らしてゆける自信もなかった。
「……本当に………大佐は迷惑じゃないのか?」
「迷惑ならこのようなこと言っていないが。」
「………………」
その顔はもう迷いは感じられなかった。
「……うん…わかった。」
エドはか細く笑った。
「荷物は明日にでも取りに行くとする。」
「だから今日はもう休みなさい。」
そういうとロイは立ち上がった。
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「えっ……いいよ……まだ大丈夫だって。」
「そのような態度でなにを言っているんだい?」
そういってロイはエドの額に手を当てた。
「やはり……熱いな。」
ロイはため息をつき
「どうしてここまでなるまで黙っていたんだい?」
実際に認識すると…
エドの顔はだんだんと赤くなっていった。
いまエドの顔は熱で赤くなり、目がトロンとしている。
完璧な風邪だ。
「昨日ちゃんと窓閉めて寝たのかい?」
「………うっ……そう言えば…大佐が帰ったあと……そんまま寝ちゃった……」
「全く君は、もう少し考えて行動をしなさい。」
エドは聞こえているのか聞こえていないのか…わからない状態になっていた。」
「まぁ、話はあとだ。」
そう言い終わるがいなやロイはエドを持ち上げた。
「軽いな…ちゃんと栄養取ってるのかね?」
「………るせ……大佐に関係ね……」
もはやしゃべる気力さえもないようだ。
そうしてエドは大佐の部屋に連れて行かれることになった。
「………自分で……歩けるよ………」
エドは大佐の腕から降りようとしたが。
「病人は大人しくしてなさい。」
ロイに強引に連れて行かれた。
エドはもちろん暴れたが所詮は大人と子供、体が思い通りに動かないやむなくロイに
担がれることになった。
部屋につくと、すぐさまエドはベットに寝かされた。
ロイは氷やらを取りに一度部屋を出て行った。
《だる……目が霞んでいた…》
エドは、だんだんと意識を無くしていった……
ロイは手に氷の入ったボールをもって戻ってきた。
それに気づきエドは体を起こそうとしたがロイに止められてしまった。
ロイはエドの額に手を当てた。
さっきより熱いな。
「………大佐の手………冷たい……」
「君が熱すぎるんだよ……」
熱で体がだるいのに、エドはこころから心地よいと思っていた。
そこでエドの意識は途絶えた………
このあと起こりえる悲劇など知るよしもなかった………
あの事故の時……自分の世界は終わってしまったと思っていた。
禁忌を犯してなお……また同じ過ちを犯してしまった。
今度の代価は大きすぎた。
全てのものを失った。
生きている気がしない………死ぬってどんなことなのだろうか?
死んだら大切な人に会える?
生きてるより楽なの?
もう…生きる気力さえなかった……
毎日…ベットのうえでそう思っていた。
誰かが話しかけても…気づくよゆうがなかた。
ただ……外だけを見つめていた。
そんな自分を励ましてくれる……あんたの事をきっとたくさん傷つけただろう…
また…大切なものを失うのだろうか…
三度目はなにも…無ければいい…
それは…叶わぬ夢でも…
きっと…大丈夫だと言ってくれた…
あんたが言うと、本当にそんな気がした。
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