記憶……儚い…夢?
消えない思い
あなたが覚えていれば
ボクはあなたの心の中で
ずっと心の中で生きている
---『夢路』---
永い眠りから覚めたみたいだ。
何かとっても大事なものを思い出した……
やっとわかったみたいだった。
自分は一人じゃないのだと。
いつでも誰かがそばにいてくれる。
どんなときでも、一緒にいてくれる。
「なんか………久しぶりだな………昔の夢なんて。」
悲しい思い出、でもそれを忘れるのは、アルをこの世から、存在すら消してしまうから。
だからオレはずっと忘れない……
「アル………」
一日眠っていたようだ。
外は朝霜で白くかすんでいた。
窓を開けると、外には冷たいもの降っていた。
「雪か……?」
季節は冬をさしている。
空から白い雪が降り注いできた。
「……寒…その日も雪降ってたな……」
そのままエドは舞い散る雪を眺めていた。
「そんなに雪が好きかい?」
「別に………セントラルじゃなかなか降らないからね。」
外を見たままエドはロイの問いに答えた。
「そんなに珍しくはないよ、去年は大雪が降った。」
「大佐にとっては無能な季節だな。」
「何か、言葉に刺があるのだが……」
いくら打たれ強いロイでも無能の言葉はとくによく効く。
「ちゃんと仕事してんのか、中尉らに迷惑かけんなよな。」
さらに追い打ち、グサグサっとくる。
さすがのロイも、二段構えにはたじろんだ。
「君は私のことをどのように観ているんだね?」
「無能で仕事もしない女好きそれでいて変態。」
【ストレートアタック、痛い……痛すぎる】
4段攻撃にロイは部屋の隅っこでいじけてしまった。
「エドワード君ここに大佐きてないかしら?」
ドアを軽くノックし中尉が入ってきた。
「大佐なら隅っこでいじけてる。」
中尉はロイに近づき…
「大佐いい加減仕事してください。」
そういうが否や、手に銃を構えた。
「わ………わかったから銃をおろしたまえ。」
中尉の行動にあわてるロイ。その光景を横で笑いながら見守るエド。
いつもの風景……変わらない…
エドが求めていたもの…望んでいたものがこの場にはあった。
「中尉大佐連れていっていいよ。」
エドは苦笑しながら、中尉に言付けた。
「わかったわ、それじゃ私は行くわね、大佐も早く戻ってきてくださいね。」
少しお辞儀をし中尉は部屋を出て行った。
静まりかえった部屋、先に口を開いたのは……
「なぁ……大佐…何でオレにそんなにかまうんだ……」
思い詰めた言葉が伝わってくる。
それはいままでためてた思いなのだろうか、少し言葉が重い…
それでもロイは黙っていた。
ロイはいくら待っても言葉を返さない、ずっと黙ったままだ。
「答えてくれ…大佐……」
「それとも……いままでのことはただの偽善かよ…」
「違う…そうではない。」
エドはロイの気持ちがわからなくなった。
「だったら………だったら答えろよ!」
いまにも叫び出しそうな声……
泣き叫びたい……でもこの瞳はもう泣くことはできない…
ロイはまた黙ったまま立っていた。
ここから逃げたい…エドは部屋を出て行こうとした。
だがその動きはロイによって止められた。
エドはロイの腕をふりほどこうと必死にもがいた。
だが大人と子供のさ、勝てるはずがなかった。
「……離せ……離せよ!!」
ロイはエドをつかむ腕に力を入れた。
「……っ……大佐には関係ないだろ!」
エドはもう何も考えていなかった。
だたいま大佐の前から消えたい、一人になりたい……そんな思いだけだった。
だがロイはそんなことなど許さないかのように、エドを離さなかった。
そして………
「………大佐……」
ロイはエドを自分の方を向いた状態で、抱きしめた。
「私が君に、接しているのは……私の意志だ……」
ロイはそのままの状態で、語り始めた。
最初抵抗していたエドだが、次第に落ち着きを戻していた。
そして……
「いままで私は君のことを見ていた………
あのときまでは気づくことはなかった……あのとき本当に君を救ってあげたいと思った。
私は………君のためならいつでもそばにいて守り続けるつもりだ。
いまはまだ……離すことはできない……だがいずれきっと離す。」
ロイはエドを抱きしめる力を強めた。
「だから……少し待っていてくれ………」
「……大佐………」
そのまま………エドは瞳を閉じた。
少しわかった………ロイのこと………いまはそれだけでいい……それだけで
きっといつか……わかる日が来るから。
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