試練
白い部屋に一つのベットがあり、その上でエドは死んだように眠っていた。
エドが病院に運び込まれてから一週間、一向に目覚める気配は無かった。
そんな中ウィンリィはこの一週間ずっとエドのそばについていた。
何度アルが『休みなよ』と言ったがウィンリィは『私は大丈夫だから気にいないで』との一点張りだった。
「エド…」
ウィンリィはエドが紺になったのは自分のせいだと毎日アルに言っていたのだ。
自分がもっとエドのことを考えるべきだった。
アルが何度『ウィンリィのせいないよ、大丈夫だって兄さんだってウィンリィを攻めたりしないよ。』と言い聞かせていたのだが。
かえってその言葉はウィンリィを苦しめていた。
「エド…ごめんね…」
ウィンリィの瞳からは涙が溢れ出るだけだった。
溢れ出た涙はウィンリィの頬をつたい、エドの頬に落ちた。
「ごめんね…」
「ふふっもうすぐ死ぬかもねお兄ちゃん。」
声のしたほうを見ると、一人の少年が立っていた。
「あははっ、人間って本当にもろい生き物だよね〜」
ウィンリィは、その少年をにらみつけた。
「ふふっそういう気が強い人は好きだよ、すぐに自分の無力に押しつぶされて死を選ぶから。」
少年の顔は笑っているがとてもとても卑劣な感じがした。
「出てって!あたしたちの前から消えていってよ!」
「ふふっ別にかまわないよ、ボクもこんなうざい人間界になんか居たくないしね。」
「さっさと、いただいて帰るよ!」
そう言って、何処から出したのか手には身長ぐらいある釜を持っていた。
「お兄ちゃんの魂いただくよ!」
(…………怖い…でもこのままじゃエドが…アル早く来て。)
「一つ言い忘れてたけど、鎧のお兄ちゃんをいくら呼んでもここにはこれないから。」
(この子は人の心を読むことが出来るの…)
「さぁ、覚悟してね。」
ウィンリィは相手の威圧感に少し押されながらもエドの前に立ち必死でエドを守ろうとした。
(ダメ……ここで逃げちゃダメ…エドは私が守らなきゃダメなの)
「強情だね、いいよ最後の挨拶だけなら待ってあげるから。」
そういい少年は一時的に手に持っていた釜を下ろした。
「バカにしないで…エドは絶対あんたになんか渡さないんだから。」
「強がりは人を滅ばすよお姉ちゃん、楽になりたいのならあきらめるのが一番だよ。」
「それに君は身をもって知ってるはずだよね、ボクに勝てるはずが無いってこと!」
少年は再び手に釜を持ち直した。
相手の威圧感にウィンリィはただびくびくすることしか出来ないのであった。
「そろそろ終わりにしようか、ボクあまり気が長いほうじゃないから。」
少年は少しずつウィンリィに近づいていった。
「こ…こないで……それ以上近づいたらスパナで殴るわよ!」
「やめときな、怪我だけじゃすまないよ。」
「こっちにこないで!」
ウィンリィは手に持っていたスパナを少年に投げつけた。
少年は軽く攻撃をかわすと、釜の枝でウィンリィの腹を殴った。
「……っ…」
殴られた衝撃でウィンリィは床に投げ飛ばされた。
「あははっ、本当に弱いね人間って、こんな攻撃一つ耐えられないなって。」
少年は床に倒れたウィンリィを冷酷な顔で見、エドの方に向き戻った。
「さぁ、お兄ちゃんの魂いただくよ、最もこのままでもどうせもうじき死んじゃうんじゃないの。」
「ボクの勝ちだよ、お姉ちゃん。」
(ダメ……やめて…やめて!)
少年がエドめがけて釜を振り上げた…だが
バシュ…
いきなり、壁に練成反応が起き部屋の壁に穴が開きそこに立っていたのは…
「アル!」
「どうあっても、みんなボクの邪魔をしたいわけね。」
少年は振り上げていた釜を下ろしアルの方に向きなおした。
「めんどくさいことは嫌いなんだよね、だからさっさと終わらせてもらうよ!」
そういった瞬間少年はアルめがけて釜を大きく振り下ろした。
即座にアルは両手でガードした…だが
「甘いよ、下ががら空きだね。」
少年は、打ち手を緩めかがみこみスキの出来た、アルの足を掛けた。
「うわ〜〜…」
アルはとっさのことで、対処が送れ後におもいっきり転倒した。
「ふふっ、さぁて邪魔者はいなくなったし」
そういい、少年はエドの近づいていった。
「待ちなさいよ…今度は…私が…相手をしてあげるわよ…」
ウィンリィはよろめきながら立ち上がった。
「その体で何が出来るの?」
少年はウィンリィに向かって手をかざしたすると売るい壁がウィンリィの周りにを覆い囲んだ。
「君は待ってそこで見てな!」
「もうボクをとめることは出来ないよ。」
少年はすべてが死神そのものだった。
「さぁ、少し時間はかかったけど、お兄ちゃんの魂いただくよ。」
そう言い放ち少年は釜を降り折下。
「やめて!!」
目の前で行われた残劇に、ウィンリィもうろうとしていた。
「ふふっ簡単だね」
少年がそういったとたん。
バシン!!
「な…なにこの光は…」
少年の足元にいきなり練成反応が起こった。
少年の持っていた釜は、即座に分解されていまった。
「な…いったい…なんだ……まさか」
「そのまさかって言ったら。」
「やっぱりね…」
薄れ行く意識の中ウィンリィはその少年の姿がはっきりと移ったのだった。
「………エド………」←文字少し小さく。
そのままウィンリィは意識を手放してしまった。
「ふぁ〜〜…久しぶりに良く寝たわ〜」
ウィンリィは大きなあくびをした。
病室はいつもと変わらずシンとしていた。
「夢…ってことないわよね」
ウィンリィはまだはっきりとしない頭で昨日の出来事を思い出していた。
「そういえば何であたしベットで寝てんの…?」
ウィンリィは自分がベットで寝かせられていたのに気づいた。
だんだんと記憶が戻ってきた…
(昨日あいつが現れて…そうだエドは…)
ウィンリィはベットからは寝起きとなりのベットの周りに掛かっているカーテンを強引に開けた。
案の定、えベットの上でエドは眠っていた。
(……よかった…)
エドは無事だったので安心したのか、ウィンリィの瞳から涙が出てきそうになった。
ちょうどその時…
「あ!ウィンリィ起きたんだね」
「アル…」
ウィンリィはアルが無事な姿を確認し、ほのかに微笑んだ。
「どうしたのウィンリィ?目が赤いけど?」
「あ…これはね………そ…そうだ、私喉か沸いたからちょっとお水飲んでくるね。」
そういってウィンリィは部屋を出て行った。
「ちょっとウィンリィーー」
「なにやってるんだろう…」
ウィンリィは中庭でぽつんとすわっている。
「…………」
「悩んだってしょうがないよ、もどうろう…」
「アル…エドの様子どんな感じ…アル……エド…!?」
病室に戻ると、アルとエドの姿わ何処にもなかった。
「うそ…どうして…」
ウィンリィはもぬけの殻になったベットに駆けつけた。
「何処に言っちゃったの?」
ベットの上には一枚の紙切れが載っていた。
「なに…何これ」
ウィンリィはその紙切れを開いた…
外はもう茜色の空に染まっていた。
ウィンリィは屋上にいた。
屋上には洗ったシーツが干してあった。
ウィンリィの視点の先には一人の影があった。
ウィンリィは、その失点の場所めがけて足を進めていた。
その人物はウィンリィの招待に気づくと振り向き…
「結構早かったじゃんかよ。」
「…うるさいわよ……」
「あたしがそれだけ待ったのか知らないくせに…。」
ウィンリィの言葉は少し泣き声に近かった。
「へへっ…ごめんな遅くなって。」
「待ちすぎて…疲れたわよ!」
ウィンリィの瞳から涙があふれてきた。
だけど、それはけして悲しみの涙ではなかった。
「待たせたんだから…何かわびなさいよ。」
「分かった…帰ったら何でもしてやるよ、だから叩くのやめろよ、痛いだろう。」
「あたしを待たせた仕返しよ、たまって受けなさい。」
そういってウィンリィは、その人物をポカポカ殴り続けた。
「ウィンリィ……凄く待たせたけど……ただいま」
「…うん…おかえり……おかえりエド…」
夕日はそんな二人を見守るかのように暖かく包み込んだ。
「あの二人にはボクは勝つことは出来ない…」
「まぁいいや、次の町に行こうっと…さよならいつまでも仲良くね。」
そういい終わると、少年は暗闇に消えていった…
そういつまでも変わらない。
引っ張りでのもなく、背中を押すのでもなく。
二人で並んで歩いていくため、、前を向いてね。
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