決断のとき
『兄さん…』
『あ…アル…』
『何で助けてくれなかたっの…』
『アル…ごめん…』
『苦しいよ…兄さん…助けて…』
『アル…』
「アル!!」
はっ はっ はっ はっ…
「はぁ〜」
何かこのごろ…あの夢しか見ないな…
<まだ外は薄暗い…>
「目…覚めちまったな…散歩でもしてくっか。」
<エドはコートをはおうとそのまま外に出て行ってしまった。>
<無意識のうちにまたこの場所に来ていた>
「さぶ………」
そういえばまだ冬だったな…
<ふっと上を見上げると、ほのかに雪がちらついていた>
「…あの日も雪降ってたな。」
あの時手さえ離さなかったらアルは…。
<雪はとても冷たく降り積もってゆく>
<見上げていると、雪は顔に当たり溶けて流れてゆく…>
……そろそろ帰るか…。
「アルまた来るな………あっ…」
<帰ろうと思い振り向くとそこには…>
「大佐………」
「やあ鋼の」
<…大佐はそっとエドに近づいて行く>
「ほう、ここが君たちの家だったところか。」
「何で…あんたがここに…」
<大佐の突然の登場でエドは少し戸惑っていた>
「君こそなんでここにいるんだ?」
「そんなの…あんたに関係ないだろう…」
「まあな…」
なんで…こいつがここにいるんだよ…。
「そういえば決心はついたかね。」
「生憎ね…何も考えきれなかったよ。」
「そうか…まぁ君に権限の余地は無いと思うがな。」
「結局拒否権はなしってかよ。」
「そういうことになるな。」
これも罪ってやつか……。
「錬金術師はかなりの腕だ、我々もてこずっている、君がいればかなりの戦力になるが。」
「でも俺は…」
「君はもう国家錬金術師ではない、だから戻ってこないかと聞いている。」
「それにいずれ私の部下かほかの軍のものが君を訪ねてくるかもしれん。」
たいそう本格的ですこと。
<雪が激しく降ってきたので二人は…一度ウィンリィの家に行くことにした>
「エドどこいてたのまったく心配したじゃな………なんであなたが一緒に…」
<家に戻ると、勢いよくドアが開かれた>
<だがロイの顔を見るなり、表情が曇っていった>
「ちょっと散歩の途中に会っちまって…強くなってきたから…」
「そう…」
<ウィンリィはエドが帰ってきたので、少し安心したようだ>
「すまんが雪が弱まるまで待たせてくれないか。」
「あ…うん…どうぞ…」
「ああ、助かる」
<ロイを家に入れた>
「悪いな…ウィンリィ心配させちゃって…」
「ううん…今コーヒー入れるね…」
「ああ…」
はぁ〜…
「はい…」
「さんきゅ…」
<しばしの沈黙…先にしゃべりだしたのはウィンリーの方だった>
「ねぇ…エド…」
「ん…なんだ」
「あのね…エド……エドは…その…軍に戻るの?」
<ウィンリィはこの話をするとよく泣きそうな顔をする>
「……なに言ってんだよ…心配すんな…もう軍には戻んねぇよ。」
「ほんと…ほんとうね」
「何度も言わせんなよ、絶対戻んねぇよ。」
「うん…約束」
<ウィンリィは指を突き出した>
「な…なんだよ…」
「約束、ほらエドも指出してよ」
「そ…そんな恥ずかしいことできっかよ…」
「もう、なによ」
<ウィンリィは強引にエドの指を自分の指に絡めさせた>
………
「約束…絶対…ぜーったい…守ってね」
<エドはほんの少し赤くなた>
「ああ…絶対戻らねぇよ…」
<二人の約束が交わされた>
<だが、それは叶わぬものになるとは二人は知る余地も無かった>
<扉の向こうでロイは二人の話を聞いていたのだった>
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